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DAOとは?特徴や仕組み、参加・設立の方法、課題と将来性を紹介

DAOは「株式会社の新しい形」とも称されており、従来にはなかった組織づくりを実現します。大きな特徴は、公平性と透明性です。そういったWeb3時代に求められる概念を、組織の形に落とし込んでいることから近年世界中で注目されています。

本記事ではDAOの定義や仕組み、注目されている背景、国内外で話題となっている事例、課題・将来性など、網羅的に解説します。

DAO初心者の方から「DAOの概要はわかっているけど、実際の参加方法や設立の方法を知りたい」といった方まで、本記事を参考にDAOの理解を深めてください。

DAOとは?

まずは、基礎知識としてDAOの定義と、冒頭でも述べた「The DAO事件」にも触れながら、DAOの成り立ちを解説します。

DAOの定義

DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)とは、ブロックチェーン技術を活用した、同じ目的をもったメンバーが集まる組織のことです。

DAOは「株式会社の新しい形」とも形容されます。従来の会社のように同じ目的に向かい、協力して事業を行いますが、中央集権的な代表者は存在しません。参加者は全員平等に権利を有し、誰でも自由に活動に参加できるのが特徴です。

また、株式会社でいう株式にあたるものもなく、代わりに参加者であることの証明や意志決定時の投票に使われる、ガバナンストークンをメンバー全員が所有します。従来の組織よりも透明性と自由度が高く、今後あらゆる業態のDAOが生まれると予想されています。

DAOの成り立ち

DAOの歴史を遡ると、2016年初頭に生まれたベンチャーキャピタル向けのオープンソースのフレームワーク「The DAO」が始まりでした。The DAOは自立型の分散投資組織であり、投資先を参加者の投票で決め、利益が上がれば投資者に配分するシステムをとっていました。

The DAOは開始直後から注目を集め、約150億ドル以上のイーサリアム(ETH)を集めたといいます。しかし2016年半ばにはシステムの脆弱性を突かれ、集めた資金の3分の1にあたる約52億円が盗まれる事件が起きます。結果としてハッキングを受けたブロックチェーンをハードフォーク(分岐)させ、ハッキングをなかったことにし、事態は収束しました。

それ以降DAOは一時的に停滞期を迎えますが、DAOの運営を試みるプロジェクトは続きます。その後「The DAO事件」の反省を踏まえて改善が繰り返され、また、スマートコントラクトをはじめとする技術の進歩も追い風となって、徐々に勢いを取り戻しました。

現在ではDAOが分散型金融(DeFi)のもっとも一般的なモデルのひとつにもなり、以前に増して世界中から注目されるようになりました。
(参照:幻冬者ゴールドオンライン『​​仮想通貨業界を震撼させた「The DAO事件」とは?』)

DAOはなぜ注目されている?

DAOが注目されている主な理由には、Web3領域との関連性の高さがあります。

Web3は次世代の分散型インターネットのことです。Web3が近年注目されている背景には、現代の社会が中央管理者を必要とせずにユーザー同士がそれぞれ管理機能をもつ、自由度の高い取引の実現を求めているからでしょう。

また、Web3が求めるものとDAOのコンセプトは類似しており、Web3の概念を組織の形に落とし込んだものがDAOであるといえます。さらに、DAOの実現にはブロックチェーンをはじめとするWeb3関連の技術が多く関わっており、DAOとその他先端技術は相互に影響し合っているのです。

例えば、仮想通貨のビットコインや、メタバース上の土地を取引するNFTゲーム「decentraland」はDAOにより運営されています。他にも、ブロックチェーン上に構築される分散型金融システムDeFiも、DAOで運営されているケースがほとんどです。

これらの技術は総じてWeb3と呼ばれ、近年急速に注目を集めている領域です。それらと密接に関わっているDAOも同様であり、今後Web3分野のサービスや利用ユーザーが増えることで、DAO自体もますます加熱すると考えられるでしょう。

Web3の概要や上記それぞれの技術については、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>『Web3(Web3.0)とは何か? 注目されている背景や魅力、現状の課題などを紹介!

DAOの特徴、仕組み

本項ではDAOの特徴をさらに掘り下げ、画期的な技術で成り立っているその仕組みを理解しましょう。

DAOの特徴

DAOの主な特徴には、以下のものが挙げられます。

  • 透明性が高い
  • 民主的に組織が運営される
  • 国籍や職業に関係なく誰でも参加できる
  • ガバナンストークンの発行により資金調達が可能
透明性が高い

DAOでの運営ルールや取引の履歴などは、誰でも閲覧可能です。また、参加者の意思で決定されたルールは、スマートコントラクトで自動的に履行されます。

スマートコントラクトとは条件が満たされた場合に、定められたことが自動で履行できるよう、ブロックチェーン上にプログラムできる仕組みのことです。

スマートコントラクトの活用により、1人の権限で無理やり組織の指針を変えてしまうような事態を防げます。スマートコントラクトの設定自体も誰もが確認でき、ブロックチェーンの性質上、悪意をもった改変や破壊は非常に困難です。

従来では会社の指針やルールがすべて明文化されているとは限らず、その確認を外部も含む誰もが行うことは、不可能に近いでしょう。また、特定の権力者の意向に重きが置かれるのも組織としては仕方のないことでした。スマートコントラクトによって自動で決定事項が履行され、さらにはブロックチェーンによる改ざんの困難さから、透明性の高い運営が実現します。

一方で、組織の方針は全員の意思とプログラムのみで決まるため、リーダーシップに頼ることなく、全体で組織をより良い方向へ導く姿勢が求められます。
ブロックチェーンについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
>>『ブロックチェーンとは?革新的な理由や仕組み、事例、課題も紹介』

民主的に組織が運営される

DAOは民主的な運営・管理がなされ、参加者全員が決定権をもつ、公平な組織です。

前述のとおり、DAO参加者は組織の運営に関する投票権にあたる、ガバナンストークンをもちます。また、基本的にコミュニティへの貢献度合いによって、それぞれの投票権の影響力も変わり、貢献度はスマートコントラクトによって自動的に判断されます。

トップダウンではない公平な運営が実現しますが、従来の会社よりも意思決定に時間がかかることも考えられるでしょう。

国籍や職業に関係なく誰でも参加できる

世界にはまだまだ、身分や性別によって就きたい職業に就けない方も多くいます。DAOはネットワーク環境さえあれば誰でも参加する権利があり、面接や試験なども基本的にありません。

また、自分の身元を明かさなければいけない決まりもないことがほとんどなので、匿名性をもって活動に参加できます。

ガバナンストークンの発行により資金調達が可能

ガバナンストークンは意思決定で用いられるだけでなく、発行することで通貨として資金を集める役割もあります。組織に将来性があると判断されれば、トークンを保有する人が増え、組織が使える資金も増えるのです。

DAOの仕組み

上記の特徴からわかるとおり、まずビジョンに共感したメンバーがDAOに集まり、参加者はガバナンストークンを保有します。ガバナンストークンは意思決定による投票の権利だけでなく、活動資金を集める役割もあります。

DAOはオープンソースであるブロックチェーン上に構築されるため、誰でもルールや概要の閲覧が可能です。またガバナンストークンによって公平に意思決定がなされ、内容はスマートコントラクトによって自動的に履行されるのが基本的なDAOの仕組みです。

つまり、DAOはガバナンストークンやブロックチェーン、スマートコントラクトの活用により透明性が保たれ、公平な意思決定ができるシステムを実現しました。

DAOの8つの事例

本項では、国内外で注目されているDAOの例を紹介します。もし興味がわくものがあれば、後述する「DAOへの参加方法」とともに、参考にしてください。

 

海外で有名なDAO5選

  • MakerDAO
  • BitDAO
  • Compound
  • PleasrDAO
  • Bitcoin

国内で話題のDAO3選

  • 和組DAO
  • SUPER SAPIENSS
  • MZDAO

海外で有名なDAO5選

MakerDAO

MakerDAOはイーサリアムのブロックチェーン上に、2014年に設立されました。DAOのなかでも歴史が古く、世界を代表する自律分散型組織のひとつに挙げられます。MakerDAOでは、参加者はイーサリアムを預け入れることで、Daiというコインを発行できます。

Daiは米ドルと同じように価格が推移するステーブルコインで、値動きが安定し、国籍や場所を問わず誰もが使用できることが特徴です。また、 MakerDAOが発行するガバナンストークンMKRは人気の高い通貨でもあり、投資対象としても注目されています。
MakerDAOの公式サイトはこちら

BitDAO

BitDAOはオープンな金融制度と、トークンを用いた経済の分散化をめざすプロジェクトです。DeFiやガバナンス、NFTなどをはじめとする分散型テクノロジー開発を支援しており、支援の内容・決議は参加者の提案と投票によって行われます。

BitDAOは、世界を代表する仮想通貨取引所Bybitからの支援を手厚く受けており、将来性の高いプロジェクトのひとつです。BitDAOが発行するトークンBITの所有により議決権をもちますが、トークンをもっていなくてもソーシャルメディアに参加し、アイデアの共有はできます。
BitDAOの公式サイトはこちら

Compound

Compoundは、仮想通貨の貸し借り(レンディング)を行うDeFiです。Compoundが行うレンディングとは、仮想通貨を借りたい人と、利息を得るために貸したい人を結びつけるサービスです。

仮想通貨は長期目的で保有する人が多く、長く寝かせるなら貸し出して利益を得たいと考えるユーザーが増えたため、BitbankCoincheckなどの取引所もレンディングを行っています。

Compound内での貸し借りの実績に応じてガバナンストークンCOMPが得られ、投票権が付与されます。CompoundはDeFiブームの火付け役ともなった存在でもあり、今後もDeFiを代表するサービスとして注目を集めるでしょう。
Compoundの公式サイトはこちら

PleasrDAO

PleasrDAOはNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を収集するDAOです。投資家やNFTコレクター、デジタルアーティストたちが資金を出し合い、NFTを購入しています。

PleasrDAOが入手した作品の所有権は、細分化してコミュニティで分散されます。目的は所有権だけでなく、参加者間での文化的重要な作品の共有により各々がインスピレーションを得ること。さらにはコミュニティ内で創造的な価値を加えたうえで、作品の素晴らしさをより広めることをめざしています。
PleasrDAOの公式サイトはこちら

NFTについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
>>『NFTとは?各業界での事例や取引の方法、今後の課題を解説!』

Bitcoin

仮想通貨ビットコインも、分散型で運営されているDAOといえます。ブロックチェーン上で中央集権的な管理者不在の仕組みをとっており、開発当初に設定されたプログラムコードにより運営を続けているからです。

安全性の担保に関しても、ルールに沿ってマイナーたちが報酬を受け取りながら日々マイニングを行っています。取引の記録と保持は利用者全員に共有され、透明性を保ちながら自立した形で適切に運営されています。

ビットコインが現在もっとも有名なDAOといっても、過言ではないでしょう。
仮想通貨について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
>>『仮想通貨(暗号資産)とは?始め方や気になる税金、将来性も解説』

国内で話題のDAO3選

和組DAO

最初から海外のDAOに参加するのは抵抗がある、と考える方に向けて、国内で人気のDAOも紹介します。和組DAOは「日本をWeb3立国に」をテーマに、Web3の最新情報を共有・議論するオープンなコミュニティです。

DeFiやNFT、ブロックチェーンなどWeb3関連のトピックを対象に、初心者から起業家まで8,000人を超える幅広いメンバーが所属しています。初心者向けの勉強会なども行われており、Discordには無料で参加できるため、DAOの入門にはおすすめです。
和組DAOの公式サイトはこちら

SUPER SAPIENSS

SUPER SAPIENSSは、日本の映画界を牽引してきた堤幸彦、本広克行、佐藤祐市らが発起人となって作られたエンタメDAOです。「まったく新しい作品作りの仕組みを作りたい」という思いから立ち上げられ、ファンとともに一気通貫したコンテンツ制作をめざしています。

ユーザーはトークンの所有によりコミュニティに参加し、投票やディスカッションにも加わります。作品作りに本格的に参画できるだけでなく、利益もサポーターに還元されるのが魅力です。新しい作品作りの形を提示し、エンタメ業界の底上げも目標に据えているプロジェクトです。
SUPER SAPIENSSの公式サイトはこちら

MZDAO

2022年8月に、ZOZOTOWN元代表の前澤友作がSNSで大々的に呼びかけ、MZDAOを作ったことが話題になりました。記事執筆時点の運用開始直後では月額500円のオンラインサロンのような形であることは否めず、また中央集権的でプロジェクト内容も不明瞭であり、DAOとは言い難いのが現状です。

ただし、今後DAOとして事業を進めていく予定であり、初期メンバーは20万人を超えたとの発表もあります。今後の動向に注目が集まっています。
MZDAOの公式サイトはこちら

(参照:BITTIMES『前澤友作氏の「MZDAO」正式スタート|初期メンバーは20万人超え』)

DAOへの参加方法と作り方

興味のあるDAOを見つけたなら、実際に参加してみましょう。本項ではDAOに参加する基本的な方法と、自分がDAOを作る方法についても解説します。

DAOに参加する方法

DAOに参加するには、組織が発行する独自トークンを買う、もしくは参加者からもらう方法が一般的です。組織によっては審査がありメンバーの許可を得てから参加が決定するケースや、コミュニティチャットにはトークンなしでも入れ、議決権を得るためにはトークンが必要、といったケースも存在します。

本項ではもっともスタンダードな、トークンを買う形での参加方法を解説します。

  1. 興味のあるDAOの方向性や目的を理解する
  2. 仮想通貨を購入する
  3. 仮想通貨をウォレットに送金し、トークンに交換する
  4. コミュニティチャットに参加する

順番に見ていきましょう。

1.興味のあるDAOの方向性や目的を理解する

まずは組織の目的や方向性を、よく理解したうえで参加しましょう。外部向けに、概要をまとめたホワイトペーパーやドキュメントが公開されていることがほとんどなので、よく確認することが重要です。

自分がどのように貢献したいか、なぜそのDAOに参加したいのかを明確にしておくことで、より意味のある活動ができるでしょう。

2.仮想通貨を購入する

トークンを手に入れるためには、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨が必要です。入手しようとしているトークンがどの通貨で買えるのか、念の為事前に確認しておきましょう。

仮想通貨取引所は、bitFlyerCoincheckなどが代表的です。

こちらの記事では、仮想通貨の買い方や他の取引所も紹介しているので、興味があれば参考にしてください。
>>『仮想通貨(暗号資産)とは?始め方や気になる税金、将来性も解説』

3.仮想通貨をウォレットに送金してトークンに交換する

トークンの取引をするためには、仮想通貨をウォレットに移す必要があります。仮想通貨ウォレットはMetamaskが代表的です。MetamaskはGoogle Chromeのブラウザ拡張機能として簡単に利用できます。

また、DAOのトークンはBINANCEBybitなど海外取引所でしか交換できない場合もあります。そのときは国内取引所で購入したコインを海外取引所に一度移さなければなりません。

4.コミュニティチャットに参加する

DAOはDiscordで運営されていることがほとんどです。コミュニティに参加したら、挨拶をしたり、過去のやり取りも見られます。新しい形での運営への参加を楽しみましょう。

DAOを立ち上げる方法

これまで何か成し遂げたい思いや目標があっても、資金不足や協力者がいないことで、諦めてきた方も多いことでしょう。しかしDAOを立ち上げてビジョンに魅力を感じてくれるメンバーが集まれば、上記のような理由で諦める必要はなくなります。

内容によっては会社を設立して経営するよりも、DAOの方が実現しやすいケースもあるでしょう。本項ではDAOの作り方を簡単に解説します。

DAOを作るためには、以下の要素を満たす必要があります。

  • 投票メカニズム
  • ガバナンストークン
  • コミュニティ
  • 資金管理・投票・提案のシステム

これらの機能を有し、DAOの作成・運営ができる代表的なアプリケーションのひとつが「Aragon」です。DAOの設立からトークンの発行、意思決定、自動履行までひと通り可能であり、実際にあらゆるプロジェクトがAragonを利用しています。

AragonでDAOを作る際の手順は、以下の通りです。

  1. ETHを入手し、ウォレットに送金する
  2. Aragonとウォレットを連携させる
  3. 「組織を作成する」をクリック
  4. テンプレートから理想に近いものを選ぶ
  5. 組織名やトークン名、シンボルなど、DAOの詳細を設定
  6. 組織を起動をクリックし署名する

立ち上げだけであれば、上記の手順を踏むだけで簡単にDAOを作成できます。また、作成にかかる費用として、最初に0.2ETHとガス代(手数料)を支払う必要があります。先に準備しておくと良いでしょう。

前提として、明確な目的やビジョンは不可欠です。多くの方が参加したくなるような明確で魅力的なビジョンをもとに、革新的な組織を構築しましょう。
(参照:Aragon『How to Start a Hedge Fund (from your Bedroom) | Surf Finance』)

DAOが抱える課題と将来性

最後にDAOが今後いっそう普及するうえで改善すべき課題や、今後の見通し・将来性について考えてみましょう。

DAOの課題

DAOが抱える主な課題には、以下のものが挙げられます。

  • 法的な整備が不十分
  • ハッキングの恐れがある
  • 意思決定に逐一参加者の合意が必要
法的な整備が不十分

DAOを含むWeb3分野はまだ歴史が浅く、テクノロジーの進歩に対して法律の整備が追いついていないことが課題のひとつです。現状、DAO内でのトラブルや運営に問題があったとしても、法での解決は難しい恐れがあります。

DAO関連の法整備の遅れは日本に限らず、世界各国でもいえることです。しかし、マーシャル諸島共和国では、世界に先駆けてDAOを法人として認めるとの発表があったり、アメリカのワイオミング州でもDAOを法人と認めるDAO法が施行されたりしています。2022年7月には、実際にAmerican CryptoFed DAOが米国で初めて法人と認められました。

国によっては少しずつDAO関連の法整備が進んでおり、日本でのDAO設立も徐々に増えていることから、政府の対応に期待が寄せられています。
(参照:CoinDesk『How the Marshall Islands Is Trying to Become a Global Hub for DAO Incorporation
Cision US Inc.『The American CryptoFed DAO is legally recognized by the State of Wyoming as the First Decentralized Autonomous Organization (DAO) in the United States』)

ハッキングの恐れがある

DAOの成り立ちの項目でも述べたように、DAOは2016年に「The DAO事件」と呼ばれる大規模なハッキング被害を受けています。DAOは新領域における技術であり、セキュリティリスクがゼロとは言い切れません。

また、DAOは法整備が追いついていないため、仮に事件に巻き込まれて資金が流出したとしても、保証されるとは限りません。DAOを利用する際には、そういったリスクを踏まえたうえで参加する必要があります。

意思決定に逐一参加者の合意が必要

DAOは投票により参加者全員の意思が反映される、民主的なスタイルで動く組織です。しかしそれには悪い側面もあり、意思決定が遅くなってしまう恐れがあります。例えば、ハッキングやバグの発生など、早急に解決すべき問題が起きた際にも、従来のトップダウン型の組織と比べると時間がかかるでしょう。

また、民主主義は必ずしも、正しい答えが導き出されるとも限りません。組織にとって不利となる選択肢に過半数が集まる懸念もあり、その場合プロジェクトの推進すらうまくいかないケースも考えられます。

DAOの将来性と今後の見通し

現状DAOにはいくつかの課題がありますが、将来性は見込まれるでしょう。今後の見通しも踏まえ、以下の可能性が考えられます。

  • DAOが注目を集めるほど資金流入が増える
  • ガバナンストークンの価値が上がる
  • あらゆる業界でDAO化する会社が出てくる
DAOが注目を集めるほど資金流入が増える

DAO自体が今後ますます注目を集めるとDAOの利用者が増え、プロジェクト数も増えるでしょう。なかには画期的な組織・サービスが誕生する可能性も十分あり得ます。そうなるとDAOに投資する投資家が増え、資金の流入も増えると予想されます。

結果的に市場規模が大きくなることで、私たちの生活にもいっそう近い存在となり、より便利で使いやすい組織形成の手段のひとつとなるでしょう。

ガバナンストークンの価値が上がる

DAOへの注目が集まると、ガバナンストークンの価値の上昇も期待できるでしょう。すでにDAOが発行しているガバナンストークンのなかには、将来性が見込まれ順調に価格を伸ばしているものもあります。

また、ガバナンストークンの価値が上がり保有者が増えるということは、DAOの参加者の増加を意味します。DAO関連のトークンの価値上昇により、DAO市場が活性化するケースは十分考えられるでしょう。

あらゆる業界でDAO化する組織が出てくる

DAOと従来の組織を比べると、それぞれに良い面と課題があるのは事実です。しかし、DAOが今後さらに一般的に広まると、DAOに魅力を感じた組織がDAO化する選択肢も生まれます。

特に透明性の高さや気軽に参加できることから、DAOは寄付金を募るようなチャリティー事業との相性が良いとされています。株式会社やNPO法人だけでなく、あらゆる業態でDAO化する組織が増える可能性があるでしょう。

DAOは発展途上ではあるが可能性を秘めている

DAOはブロックチェーンやスマートコントラクトなどの技術をかけ合わせて実現した、新しい組織の形です。公平で透明性が高い特徴があり、Web3を代表する概念のひとつに挙げられます。

DAOはまだまだ法整備が追いついていないことや、セキュリティリスクなどの懸念点もあることは事実です。しかし、海外では法人として認められている事例もあり、今後世界中でさらに注目が集まるでしょう。

DAOがこれからいっそう注目され、魅力を感じてDAO化する組織が増えることで市場が活性化し、より良いサービスが生まれたり、身近な存在となったりする可能性も秘めています。

従来型の組織にもDAOにも一長一短はありますが、明確なビジョンをもつ人にとってDAOは組織形成の新たな選択肢です。参加者が増えることでより便利で使い勝手の良いものになり、DAOから素晴らしいプロジェクトが誕生する可能性も秘めているので、今後の動向に注視しましょう。