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ブロックチェーンとは?革新的な理由や仕組み、事例、課題も紹介

ブロックチェーンは世界中で急速に広まり、注目を集めている革新的な技術です。ブロックチェーンを活用することで、情報の漏えいや改ざん・不正利用を飛躍的に減らせます。また、今後ますます広く扱われるようになると、より安全で便利な社会が実現するといわれており、政府もブロックチェーンの普及に前向きな姿勢を示しています。

本記事ではブロックチェーンの概要や仕組み、実際の革新的な活用の事例、課題、将来性などをまとめました。

海外ではブロックチェーンを用いて国を挙げた取り組みをしている事例もあり、今後世界中で分野を問わず活用されることが予想されます。本記事を参考に、ブロックチェーンや時代の流れに対する理解を深めましょう。

ブロックチェーンとは?

まずはブロックチェーンの概要や生まれた背景、世界中で革新的な技術として注目されている理由を見ていきましょう。

ブロックチェーンの定義・概要

ブロックチェーンとは、暗号化した取引履歴を鎖のようにつなげることで正しい取引履歴を保持し、ユーザー間でデータを分散する仕組みのことです。

ブロックチェーンの技術を活用することで、これまでデジタル取引の課題だったデータ改ざんや悪用が困難になり、システムダウンの可能性が低減されます。また、これまでは必須だった企業や組織といった仲介役が不要となり、まったく新しい取引の形が生まれるのです。

また、一般社団法人日本ブロックチェーン協会は定義を以下のように示しており、国内では総務省の「情報通信白書」をはじめ、あらゆる場面で参照されています。上記の説明も同協会の定義をわかりやすく言い換えたものです。

1)「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。」

2)「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」
(参照:JBA 日本ブロックチェーン協会『「ブロックチェーンの定義」を公開しました』)

ブロックチェーンの生みの親、サトシ・ナカモトとは?

2009年より運用が始まったビットコインを支える技術として、ブロックチェーンは誕生しました。ビットコインやブロックチェーンの生みの親は「サトシ・ナカモト」という人物、もしくは組織が生み出したとされています。

海外を含めサトシ・ナカモトを名乗る者が現れたり、サトシ・ナカモトの正体をめぐっての論争がたびたび繰り返されてきましたが、明確な正体はいまだに明かされていません。

ブロックチェーンが注目されている背景

ブロックチェーンは革新的な技術として、世界中で注目を集めています。それほどまでに注目されている主な理由は、あらゆる業界において取引の透明性を維持できることにあります。

ブロックチェーンの代表的な特徴のひとつが、公明な取引履歴を残せることです。そして、ブロックチェーンを用いる取引は金融商品や仮想通貨に限らず、シェアリングサービスや著作権管理、医療サービス、行政手続きまで幅広い分野での活用が見込めます。公的情報の紛失や過去のデータの改ざんなどがたびたび問題になりますが、ブロックチェーンを活用することで、公明な記録が残せます。

さらにはブロックチェーンを用いた取引の場合、管理者が不要なため個人情報が仲介者に集まることがなく、データ漏えいの心配もなくなるでしょう。また、改ざんが困難となることで、見知らぬ人との直接的な取引をする際にも透明性が保たれ、安心して取引できます。取引の際の個人情報は暗号化されるので、悪意をもった個人情報の取得や漏えいも心配がありません。

以上のような理由からブロックチェーンはあらゆる業界での活用が期待でき、今後私たちの生活をより安全に、便利にする仕組みとして、注目を集めているのです。

現に株式会社グローバルインフォメーションによる市場調査レポート「ブロックチェーンの世界市場予測」によると、ブロックチェーン市場は2021年の49億3,500万米ドルから、2028年には2,279億9,600万米ドルに成長すると発表されました。

また、2021年から2028年までの年平均成長率は72.9%としており、今後世界中の多くの業界でブロックチェーンが活用され、私たちの生活により身近な存在となるでしょう。
(参照:PR TIMES『ブロックチェーン市場、2021年~2028年までのCAGRは72.9%と推定』)

ブロックチェーンの仕組み・種類・特徴

ブロックチェーンの概要を踏まえたうえで、その革新的な技術を可能とした仕組みやブロックチェーンの種類を解説します。

ブロックチェーンの仕組み

従来のインターネット上の取引において、仲介者の信頼性や改ざん、情報漏えいリスクの低さは絶対条件でした。これからのインターネットでは仲介者が不要になるといわれていますが、上記のような課題を新しい形で解決したのがブロックチェーンです。ブロックチェーンの革新性は、以下のような技術の応用により実現しました。

  • P2P
  • ハッシュ
  • 電子署名
  • コンセンサスアルゴリズム
  • スマートコントラクト

順番に見ていきましょう。

P2P

P2P(Peer to Peer)とは中央サーバーを介さず、複数のコンピューターを1対1で直接接続し、成立するネットワークのことです。また、P2Pでつながったコンピューターが集まり、相互に通信するネットワークはP2Pネットワークと呼ばれます。

P2Pでつながったコンピューターは公平に同等の機能をもち、管理システムが分散されます。つまり、一部のコンピューターに問題が起きても全体が止まることはなく、システムダウンの心配がなくなるのです。

P2Pシステム自体はもともとファイル共有ソフトでも活用されており、目新しいものではありません。しかし、後述するハッシュやコンセンサスアルゴリズムなど他の技術と組み合わせることで、革新的なブロックチェーンの技術が生まれました。

ハッシュ

ハッシュは前述のブロックチェーン協会の定義にも出てきましたが、データの改ざんを困難にする暗号化技術のことを指します。入力されたデータはハッシュ関数によって暗号化され、暗号化されたハッシュ値からは元のデータがわかりません。

これを取引に活用すると、取引履歴に少しでも手を加えられるとまったく異なるハッシュ値に変換されるため、容易に改ざんが検出されます。ブロックチェーンはハッシュの特性を活かし、効率的で改ざんが困難なデータ管理を実現しました。

電子署名

電子署名はデジタル資料の作成者を証明する電子的なサインであり、ハッシュと同じくデータ改ざん防止に役立ちます。

電子署名を作成すると、公開鍵と秘密鍵が生成されます。署名者は秘密鍵を使ってデータに署名して、電子署名として送信。電子署名を受け取った側は公開鍵によって、電子署名が正しいものであることを確認できます。なりすましやデータの改ざんを防げますが、秘密鍵の取り扱いには十分注意しましょう。

コンセンサスアルゴリズム

ブロックチェーンは管理者が不要であり、台帳の情報をネットワーク上の全員で共有するため、参加者全員に対して合意形成を行う必要があります。合意形成にはいくつかの種類がありますが、ビットコインで採用されているProof of Work(PoW:プルーフオブワーク)が代表例のひとつです。

ビットコインのPoWには、改ざんや不正行為の検証作業をユーザーに行わせ、成果をあげた者に仮想通貨を与えるマイニングがあります。マイニングはデータ改ざんやハッキングなどの不正行為よりも、検証作業による報酬で得られるメリットを相対的に大きくすることで、管理者がいなくてもデータの正しさを維持できる仕組みです。

また、コンセンサスアルゴリズムにはPoW以外にも、Proof of Importance(PoI)やProof of Stake(PoS)など複数の種類があります。

スマートコントラクト

スマートコントラクトとは取引・契約において、条件が満たされたときに特定の処理が自動的に実行される、契約履行プロセスの自動化のことです。

ブロックチェーン上で行われる取引や契約の発行条件を設定しておくことで、業務プロセスの煩雑さや取引相手の信頼度に関係なく、確実で透明性の高い業務遂行が可能になります。

またスマートコントラクトは、ネット上の金銭取引に限りません。例えばIoTと連携することで、自動車ローンが停滞したときに自動車をロックする契約を自動で履行したり、ブロックチェーンと連携し、投票における集計をスマートコントラクトで行うことで第三者の改ざんを防いだりします。

実際にアステリア株式会社ではブロックチェーンやスマートコントラクト、デジタルトークンを株主総会の議決権投票に活用し、透明性の高い投票システムを実現しました。
(参照:アステリア株式会社『株主総会 議決権投票の本番環境にブロックチェーン技術を適用』)

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンは、以下の3種類に大別できます。

  • パブリックチェーン
  • プライベートチェーン
  • コンソーシアムチェーン

順番に解説します。

パブリックチェーン

パブリックチェーンは管理者が存在せず、参加者の制限がない、不特定多数のユーザーが利用できるブロックチェーンです。取引履歴がすべて公開されており、透明性が高い特徴があります。

ただし、ルールの変更には一定数以上の参加者の合意が必要であり、合意形成までに期間を要することがあります。ビットコインをはじめとする仮想通貨で用いられることの多い、基本的なブロックチェーンです。

プライベートチェーン

プライベートチェーンは単体の管理者が存在し、利用できるユーザーも限られています。パブリックチェーンよりは中央集権に近い要素があり、クローズドな取引が行われるため、透明性は低くなります。しかし、参加者は限られており、合意のうえで集まっているケースがほとんどなので、取引自体はスムーズに行われることがほとんどです。

プライベートチェーンは企業や組織内の取引、金融機関での取引記録などに使われます。

コンソーシアムチェーン

コンソーシアムチェーンは特定の多数の組織・企業が管理者として存在し、限定されたユーザーのみが利用できます。プライベートチェーンとパブリックチェーンの間のような位置付けといえるでしょう。パブリックチェーンよりも門戸が狭いため合意形成のスピード感は保ちつつ、プライベートチェーンのように管理者が単体でないため、透明性は維持されやすくなります。

また複数の組織が運営に携わり、各自がセキュリティ対策を講じるため、上記2つに比べるともっとも安全性が高いのが特徴です。

ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンの主な特徴については概要の項目でも簡単に触れましたが、理解を深めるためにさらに深堀りします。

本項では以下のブロックチェーンの特徴を見ていきましょう。

  • 自律分散システム
  • 改ざん・不正が困難
  • 運用コストが安い
自律分散システム

ブロックチェーンは従来と異なり、管理者が存在せずすべての参加者が自律して取引履歴を保持し続けます。この仕組みは自律分散システムと呼ばれます。管理者が個人情報を集めないことで、誤操作やハッキングによる大規模な情報漏えいなどが防げ、より安全性・透明性の高い取引が可能となるのです。

改ざん・不正が困難

鎖状に履歴を重ね続けるため、途中で情報を書き換えたり削除したりすることは非常に困難です。前述のとおり全員が履歴を保持しているとはいえ、履歴はすべて暗号化されるため、共有されているデータから個人情報が漏れることも容易ではありません。また、取引履歴が長くなればなるほど、改ざんはますます困難になるといわれています。

ただし、一度積み重ねてしまった履歴に誤りがあったとしても変更は難しく、融通が効かない面には注意が必要です。

運用コストが安い

従来のシステムでは管理サーバーが一括して処理を行いますが、ブロックチェーンは管理機能が分散されています。よって、高額なサーバーを構築する必要がなく、運用コストや導入コストが低減されます。

また、ブロックチェーンの活用により、契約書の締結やデータ処理といった人為的な作業が不要になり、事務コストの大幅な削減が可能です。さらには暗号化や分散管理によって契約内容の改ざんも防げます。不動産取引や証券・ローンなどの煩雑な契約処理が簡素化されることで、安全性の担保以外にも業務効率化やコスト削減につながります。

ブロックチェーンが活用されているサービス例

ブロックチェーンが活用されている技術や、実際の活用事例を見ていきましょう。

ブロックチェーンを利用した実際のサービス

実際にブロックチェーンが活用されている、革新的なサービス事例を紹介します。金融から始まり、医療やエネルギー事業、珍しい形のデジタルコンテンツプラットフォームなど、幅広い分野での事例をまとめました。

  • 中央銀行デジタル通貨
  • NFT処方箋
  • ENECTION2.0
  • CANDL
中央銀行デジタル通貨

中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)とは、法定通貨建てのデジタル化された中央銀行の債務のことです。中央銀行は日々通貨を発行していますが、それをデジタル化することが世界中で検討されています。

デジタル化されたお金といえば仮想通貨を想起させますが、仮想通貨との違いは法定通貨である点です。CBDCは中央銀行が発行するため、国家の経済状況によって価値が変動します。しかし国家による価値の裏付けがあるため、仮想通貨のように激しい値動きはありません。

日本でのCBDCの発行予定は今のところありませんが、世界各国では導入準備を進める国が増えています。例えば、中国による「デジタル人民元(DCEP)」は2022年冬季オリンピックで、外国人向けに公開されました。また、欧州中央銀行も「デジタルユーロ」への取り組みを始めており、23年末までには開発に着手する可能性を示しています。
(参照:日本銀行『中央銀行デジタル通貨とは何ですか?
日経BP『デジタル人民元とは? 開発を急ぐ背景と実証実験の経緯を振り返る
ロイター『ECB、23年末までにデジタルユーロ開発着手も=パネッタ理事

NFT処方箋

新型コロナウイルスの影響でオンライン診療の需要が急速に高まっており、同時に医療関連施設における個人情報保護と処方箋の電子化も急がれています。NFT処方箋はGENie株式会社とセントラル薬局グループ、東京白金台クリニック、ID管理システムに強いcanow株式会社などが連携して取り組む、革新的な医療サービスです。

ユーザーは東京白金台クリニックで発行されたNFT処方箋を、canow株式会社が構築するブロックチェーン技術を活用したIDシステムで管理します。事前に登録している基礎疾患や常備薬の情報とともに、NFT処方箋を調剤薬局へ共有します。薬局は共有された情報をもとに運送を行うGENie株式会社へ配達を依頼し、最短で当日中に自宅に処方薬が届く仕組みです。

今後NFT処方箋だけでなく、オンライン診療や母子健康手帳など利用範囲を拡充するとともに、医療分野でのますますの浸透を図っています。
(PR TIMES『GENie株式会社、セントラル薬局グループ、東京白金台クリニック、canow株式会社、ブロックチェーン技術のNFTを活用した処方箋の有用性に関する実証実験を開始』)

ENECTION2.0

株式会社UPDATERは再生可能エネルギー事業「みんな電力」において、P2P電力トラッキングシステム「ENECTION2.0」で使用するパブリックブロックチェーンに、Solana(ソラナ)を採用しました。Solanaは高速性と手数料の安さを兼ね備えており、導入により処理速度を20倍高速化させました。

ENECTION2.0は発電所が発電した電力をトークンに置き換え、法人は消費した電力に相当するトークンを支払います。発電量と需要量に合わせて、再生可能エネルギーを作る発電所と法人を最適にマッチングできます。マッチング結果や電気の流れはパブリックブロックチェーン上に記録され、改ざんできないようにすることで電力や金銭の流れの見える化を実現しました。

同社は電力事業以外にもブロックチェーン技術を活用することで、生産過程や取引に公平性・透明性をもたせ、環境や人に配慮したエシカルなサプライチェーン構築をめざしています。
(参照:PR TIMES『みんな電力、電力トレーサビリティを実現する「ENECTION2.0」のブロックチェーン基盤にSolanaを採用』)

CANDL

CANDLは株式会社TARTが開発したシステムです。ブロックチェーン技術により電子書籍の中古販売を可能にし、その収益の一部を権利者に還元する仕組みを構築しました。さらには書籍取引にかかる印税の権利自体も販売できます。

美術の著作物が転売されるたびに原作者に利益が還元される「追求権」は、EUでは以前から導入されています。そのような取り組みが国内の電子書籍・電子コミックに実装され、新たな書籍閲覧体験が生まれました。

(参照:経済産業省『ブロックチェーン実証・UGC調査』)

ブロックチェーンを活用した技術

前項の事例でも出てきたNFTをはじめ、ブロックチェーンが活用されている主な技術には、以下のものが挙げられます。

  • NFT
  • 仮想通貨
  • メタバース
  • DAO

また、これらのブロックチェーンを活用した技術は、総じてWeb3の領域に該当します。Web3とは従来のように巨大テックのシステムを介さずに、ユーザー同士で直接コンテンツやデータ、金銭のやり取りを実現する次世代の分散型インターネットのことです。

それを叶えるのがブロックチェーン技術であり、インターネットの管理体制を個人に分散することを可能にしました。

Web3について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
>>『Web3(Web3.0)とは何か? 注目されている背景や魅力、現状の課題などを紹介!』

NFT

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、唯一無二の価値をもつデジタルデータを指します。NFTはブロックチェーンの技術を活用して、唯一性・希少性の証明を実現しました。

NFTによってデジタルアートやゲーム、音楽など、今までは複製や改ざんが容易だったものでも所有権を示したり、この世にひとつしかない原本であることを証明したりできるようになりました。

NFTについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
>>『NFTとは?各業界での事例や取引の方法、今後の課題を解説!』

仮想通貨

代表的なブロックチェーン技術の活用例といえば仮想通貨です。仮想通貨は金融機関をはじめとする仲介組織を介さずに取引できますが、それを実現したのがブロックチェーン技術です。

ブロックチェーン技術によって仮想通貨の取引履歴が構築され、取引データを参加者間で共有・監視することで安全性を確保します。

仮想通貨については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
>>『仮想通貨(暗号資産)とは?』

 

メタバース

メタバースはインターネット上の仮想空間のことであり、ゲームやオンラインイベントの分野で近年使われることが増えました。

メタバースでは、仮想空間内で使用できるNFTやアイテム・土地の売買が行われており、ビジネス取引での使用も増えています。そういった場合に透明性・安全性ある取引を行うためには、ブロックチェーン技術が必要です。

今後メタバースがプラットフォームとして独自の経済圏を構築するためには、ブロックチェーン技術の活用が避けられません。

メタバースについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
>>『メタバースとは?知っておきたい7つの事例も紹介』

DAO

DAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)とはブロックチェーンの技術を活用した新しい組織の形です。

DAOは特定の管理者や所有者が存在せず、同じ目的をもったメンバーが一定のルールのもとで意思決定を行います。DAOはブロックチェーンにより世界中の人々が平等に参加でき、すべての取引や契約はブロックチェーン上に履歴が残るので、公平性や透明性が担保されます。

DAOについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
>>『DAOとは?特徴や仕組み、参加・設立の方法、課題と将来性を紹介』

ブロックチェーンの課題と将来性

最後にブロックチェーンを活用するうえでの現状の課題と、将来性について考えてみましょう。

ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンの課題には、以下のものが考えられます。

  • 合意形成・取引処理に時間がかかる
  • 取引データが巨大化する
  • 法の整備が必要
合意形成・取引処理に時間がかかる

現状、ブロックチェーンを用いた送金や決済には、従来のようなクレジットカード決済やQRコード決済と比べると時間がかかってしまいます。

パブリックチェーンの項目でも述べたように、ブロックチェーン内の合意形成に時間がかかることが原因のひとつです。パブリックチェーンよりもスピード感のあるプライベートチェーンでも従来の決済方法よりは決済スピードが遅く、今後一般的な決済手段として普及するうえでの課題であると考えられます。

取引データが巨大化する

ブロックチェーンは取引履歴が蓄積され続けるため、利用が増えるほどデータ量・通信量が増えてしまいます。今までは管理者のサーバーがその負荷を担ったり、ネットワークやコンピューターの性能が上がったりしたことで、情報量の増大に対応できていました。

今後幅広い分野でのブロックチェーンが利用され、日常的に広く使われるようになったとき、現状の通信環境では対応できない可能性があります。また、通信量・データ量の増大により、通信の遅延が深刻な問題となることも考えられるでしょう。

データの肥大化による遅延の問題は以前より議論されており、分散するデータの圧縮といった解決策も提示されています。前述の取引処理に時間がかかる件も踏まえて、今後解決に向かうことを期待しましょう。

法の整備が必要

ブロックチェーンでは機密情報や高額な金銭のやり取りが、ネットワーク上で行われることが予想されます。一方で、ブロックチェーンをはじめとする新領域に関しては、利用にともなう法整備がまだ十分にされていないことが課題のひとつです。

今後、公共サービスがブロックチェーン上で行われる未来も予想されますが、そうなるとますます国や政府も巻き込んで、体制を整えなければなりません。

政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」では、今後ブロックチェーンの利用拡大・普及させるために、必要な環境整備を図る旨が記載されています。これからの国を挙げての取り組みに期待しましょう。

ブロックチェーンの将来性

ブロックチェーンの普及には前述のとおり課題もありますが、今後新たなインフラとして機能する未来も十分に想像できます。金銭の授受だけでなくあらゆる契約や取引がブロックチェーン上で行われ、IoTやAIとのかけ合わせにより、さらに効率的で安全な社会が実現するでしょう。

企業はシステムダウンや不正防止のために割いていたリソースを削減でき、よりクリエイティブな仕事に注力できます。また、スマートフォンやパソコンだけでなく住居や自動車、オフィスなどもブロックチェーンとつながり、よりスムーズな生活を叶え、便利なサービスも次々に生まれるでしょう。

公共サービスにまでこういった技術が広まれば、役場へ赴いて行っていた煩雑な手続きがネット上で完結したり、納税・公共料金の支払いもブロックチェーンを活用してで行えたりします。

国内でもすでに公共サービスを電子化した電子政府・電子自治体という取り組みを行っており、それらの利便性・安全性を高めるためにはブロックチェーンが組み込まれることも想像できます。

(参照:総務省『電子政府・電子自治体って何?』)

ブロックチェーンでより安全で便利な社会をめざす

ブロックチェーンは取引履歴を鎖状につなげていくことで、改ざんや不正を困難とする技術です。管理者不在でも参加者同士の安全な直接取引を可能とすることから、革新的な仕組みといわれています。

ブロックチェーンはWeb3領域の普及に欠かせない技術であり、他の技術ともかけ合わせることで金銭取引や契約だけでなく、今後あらゆるものが便利に、より安全になっていくでしょう。

ブロックチェーン技術の普及には解決すべき課題もあり、また、安全で便利であることが世の中に広く知られる必要があります。海外ではデジタル通貨や電子政府など公共事業にも用いられる機会が増えており、日本でも普及が急がれる未来は遠くないでしょう。

ブロックチェーンは革新的な技術であり、私たちの未来をより良いものへと引き上げてくれる可能性を秘めています。今後の動向にますます注視しましょう。